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D-sports SHIZUOKA編集部コラム 《第97回選抜高校野球大会出場決定》 常葉大菊川が2年ぶり6度目のセンバツ切符獲得。2007年春全国優勝チームの正捕手が指揮官として2度目の聖地へ

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D-sports SHIZUOKA編集部コラム 《第97回選抜高校野球大会出場決定》 常葉大菊川が2年ぶり6度目のセンバツ切符獲得。2007年春全国優勝チームの正捕手が指揮官として2度目の聖地への画像
THINK&RUN/D-sports SHIZUOKA編集部

 1月24日。常葉大菊川の野球部の選手たちの努力の汗が染み込んだ野球帽が真っ青な空に舞い上がった。吉報が届いたのは、午後4時。加藤伸司校長から「皆さんの積極的な野球への姿勢、前向きさが評価され、見事春のセンバツへの出場が決定しました」と告げられると、選手たちは表情をほころばせた。「選んでいただいてホッとしています。東海大会が終わってからすごく長く感じましたが、センバツに向けて今日から良いスタートを切れそうです」と橘木千空主将は喜びをかみしめた。
 秋は、県予選から東海大会までの11試合で79得点を挙げる強力打線を武器に東海準優勝まで駆け上がった。昨夏に新チームが始動して以降、「例えばきれいなフォーム、自分のスイングで打つとか、そういう形や理屈ではない、相手ピッチャーと勝負する上で必要なもっと大事な部分」(石岡諒哉監督)を普段のバッティング練習から意識。たとえ相手に崩されてもファールにして食らいつくなど、打席での執念や粘り強さを磨いた。追い込まれた状況でもヒットを放つ場面が多く見られたのはその証であり、これまで積み重ねてきたものを出し切ってオフシーズンを迎えた。
 冬は、ウエイトトレーニングなど身体づくりに注力。現在は、バッティングでの打球の飛距離が伸びるなど目に見える形で成果が現れており、自慢の強力打線にさらに磨きがかかっている。前回センバツに出場した2023年の大会は、プロ注目の投手を擁する専修大学松戸(千葉)を相手に、一度もホームを踏むことなく敗れた。「甲子園では打てないと勝てないと痛感した」と監督は言い、選手たちもその教訓を胸に打撃力を培ってきた。今年こそその成果を発揮し、春の聖地に快音を響かせるつもりだ。橘木主将は「常葉大菊川野球部は、勝つことが求められていると思う。前回出場したときは1勝を挙げることができなかったので、まずは甲子園で勝利することが目標。そしてその先にある大会優勝を目指します」と気を吐いた。

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選手達と同じく、指揮官もまた心に静かな闘志を燃やしている。
常葉大菊川がセンバツに出場するのは、2年ぶり6度目。2007年には“フルスイング打線”と謳われた超攻撃野球でトーナメントを勝ち上がり、同校初の日本一に輝いた。そのチームで扇の要としてナインを牽引していたのが、現在チームを率いている石岡監督だ。指揮官として聖地に立つのは、前回出場した2023年大会以来2度目となる。「自分は、小学生時代から社会人までずっと指導者に恵まれていたと思います。自分も監督として、選手たちに良い思いをさせてあげたいですね――」。その言葉には、自分をセンバツ優勝まで導いてくれた恩師、森下知幸監督への思いがある。
昨年1月16日、当時御殿場西高校の野球部で指揮を執っていた森下監督が急逝。前日まではいつもと変わらず、元気にノックを打っていたという。2020年に石岡監督が母校を預かってから、森下監督が率いる御殿場西と公式戦で対峙したのは3回。初めて指揮官として顔を合わせた2022年の春の県大会こそ敗れたが、あとの2回は勝利を収めた。それでも、「“監督という同じ土俵に立った”なんていうのは恐れ多くて(笑)。僕の中では、ずっと“監督と選手”という感覚でしたね。決して追い越せるような存在ではない、偉大な方でした」(石岡監督)。
それでもいつか恩師を越え、選手としても、指揮官としてもチームを日本一に導くために。この春、監督としての聖地での初勝利を、春の空に届けるつもりだ。

(文=篠田江梨奈 
D-sports SHIZUOKA編集部)

公開日:2025/01/31
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